坂口社会保険労務士事務所 顧問先向け かんたん解説
賞与・インセンティブの取り扱い

賞与は「年3回まで」と「年4回以上」で扱いが変わる
— インセンティブ(歩合)の精算期間による違いも確認

社会保険(健康保険・厚生年金)では、同じ「賞与」という名前でも、1年に何回支給するかで保険料の計算方法と届出が変わります。また、インセンティブ(歩合)は、1か月ごとに精算するか、2か月以上の期間で精算するかによって、社会保険だけでなく、給与の支払い方や残業代の計算まで扱いが変わります。このページでは、その違いを早見表と根拠条文付きで確認できます。

先に結論

  1. 年3回までの賞与は、社会保険上の「賞与」。支給のたびに保険料を計算し、賞与支払届を提出します。
  2. 年4回以上支給する賞与は、社会保険上は「報酬」。1年分を12で割った額を毎月の給与に上乗せして、標準報酬月額(毎月の保険料の基準額)を決めます。賞与支払届は出しません。
  3. 1か月ごとに精算するインセンティブは、毎月の給与そのもの。毎月支払い、残業代の計算にも含めます。
  4. 2か月以上の期間で精算するインセンティブは、毎月払いの例外にでき、残業代の計算基礎から外れます。社会保険では「賞与」と同じく年間の支給回数で判定します(年4回以上なら報酬、年3回以下なら賞与)。

01 回数で分かれる2つの扱い 02 回数の数え方 03 年4回以上の計算方法 04 年3回以下の計算方法 05 インセンティブと精算期間 06 精算期間別 早見表 07 設計・変更時の注意点 08 よくある質問 09 チェックリスト 10 根拠条文・通達

01賞与は「年に何回支給するか」で扱いが分かれる

名前が「賞与」でも、社会保険では年4回以上なら毎月の給与と同じ扱いになります。

賞与・手当が、年3回以下なら「賞与」、年4回以上なら「報酬(毎月の給与と同じ扱い)」に分かれることを示す分岐の図
境目は「年3回」と「年4回」の間。名称ではなく、支給回数で決まります。
年1回年2回年3回年4回年6回年12回
← 年3回以下は「賞与」
年4回以上は「報酬」→
年3回以下
「賞与」として扱う
  • 支給のたびに、その賞与額から保険料を計算する
  • 支給から5日以内に賞与支払届を提出する
  • 毎月の保険料(標準報酬月額)には影響しない
年4回以上
「報酬」として扱う
  • 1年分の合計を12で割り、毎月の給与に上乗せする
  • 算定基礎届(年1回の定時決定)に含めて届け出る
  • 賞与支払届は提出しない(支給月に賞与としての保険料はかからない)

法律は、労働の対価として受けるもののうち「3か月を超える期間ごとに受けるもの」を賞与、それ以外(臨時に受けるものを除く)を報酬と定めています。通達はこれを支給回数に置き換え、年4回以上支給されるものは報酬、年3回以下のものは賞与と整理しています。

用語の整理: 通達では、年4回以上支給されて報酬扱いになる賞与を「賞与に係る報酬」、毎月支給される給与を「通常の報酬」と呼びます。以下、このページでもこの呼び方を使います。

根拠条文・通達を見る(健康保険法第3条、厚生年金保険法第3条、令和5年Q&A)
「この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。」
「この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。」 健康保険法 第3条 第5項・第6項 — e-Gov 法令検索(厚生年金保険法 第3条 第1項 第3号・第4号も同じ内容 — e-Gov 法令検索)
「局部長通知1の(1)に示すとおり、年間を通じ4回以上支給されるものは「賞与に係る報酬」、3回以下のものは「賞与」に該当する。このため、支給間隔によらず、年間の支給回数が3回以下であれば、「賞与」に該当する。」 「「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について」にかかる留意点について(令和5年6月12日 事務連絡)Q&A Q.7 — 厚生労働省 法令等データベース

02「年4回以上」の数え方

判定の基準日は毎年7月1日。規程の定めか、直前1年間の実績のどちらかで4回以上なら報酬になります。

7月1日を基準日として、規程で年4回以上と定めているか、直前の1年間に実際に4回以上支給したかのどちらかに当てはまれば報酬になることを示す時間軸の図
毎年7月1日に、規程の定めと直前1年間の実績を確認します。

毎年7月1日現在で、次のどちらかに当てはまる場合に「報酬」(賞与に係る報酬)になります。

判定方法内容
ア 規程で判定給与規程などで、年間を通じて4回以上支給することが客観的に定められている
イ 実績で判定7月1日前の1年間に、実際に4回以上支給されている

回数を数えるときのルール

場面数え方
名称が違う手当が複数ある名称ではなく、同じ性質のものごとに回数を数える。規程や賃金台帳から性質が異なることが明らかなものは、別々に判定する
賞与を分割して支給した会社のやむを得ない事情で、規程や慣例によらず例外的に分割支給した場合は、まとめて1回と数える
その年だけの特別な賞与過去数年にわたって支給がなく、その年に限り特別に支給された賞与は回数に入れない
年度の途中で回数を変更した7月2日以降に回数が変わっても、次の定時決定による標準報酬月額が適用されるまで、扱いは変わらない
手当・賞与を新設した年4回以上支給する定めであっても、次の定時決定による標準報酬月額が適用されるまでは「賞与」として扱い、賞与支払届を提出する
「支給することができる」という規定必ず支給されるとは限らない定め(「支給することができる」「成績上位者のみに支給する」など)は、新設時は「賞与」として扱い、次の定時決定の際に支給実績で判定する

切り替わりのタイミングに注意: 回数を変更・新設しても、すぐに扱いが切り替わるわけではありません。切り替わるのは、次の定時決定(7〜9月の随時改定を含む)による標準報酬月額が適用されるときです。それまでは従前の扱いを続けます。

根拠通達を見る(昭和53年6月20日 局部長通知・課長通知)
「毎年七月一日現在における賃金、給料、俸給、手当又は賞与及びこれに準ずべきもので毎月支給されるもの(以下「通常の報酬」という。)以外のもの(以下「賞与」という。)の支給実態がつぎのいずれかに該当する場合は、当該賞与は報酬に該当すること。
ア 賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定(以下「諸規定」という。)によつて年間を通じ四回以上の支給につき客観的に定められているとき。
イ 賞与の支給が七月一日前の一年間を通じ四回以上行われているとき。」 健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて(昭和53年6月20日 保発第47号・庁保発第21号)1(1) — 厚生労働省 法令等データベース
「ア 名称は異なつても同一性質を有すると認められるもの毎に判別すること。
イ 例外的に賞与が分割支給された場合は、分割分をまとめて一回として算定すること。
ウ 当該年に限り支給されたことが明らかな賞与については、支給回数に算入しないこと。」 同通知 1(2)
「局、部長通知1の(1)にいう「賞与」について、七月二日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ四回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準報酬月額の定時決定(七月、八月又は九月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものとすること。」 同名の課長通知(昭和53年6月20日 保険発第72号・庁保険発第9号、平成30年7月30日改正)1(3) — 厚生労働省 法令等データベース

「支給することができる」旨の規定の扱いは、令和5年6月12日事務連絡 Q&A の Q.8 によります(厚生労働省 法令等データベース)。

03年4回以上の賞与 — 12で割って月額に上乗せ

1年分を12か月にならして、毎月の給与と合算します。

1年間に支給した賞与の合計120万円を12で割り、毎月の給与30万円に10万円を上乗せして報酬月額40万円とする図
7月1日前の1年間に支給した賞与の合計 ÷ 12 を、毎月の給与に加えて標準報酬月額を決めます。
賞与に係る報酬の月額 = 7月1日前の1年間に受けた賞与の合計額 ÷ 12
報酬月額 = 通常の報酬(4・5・6月の平均) + 賞与に係る報酬の月額

※ 新設や回数の変更で新たに報酬扱いになった最初の年は、実績の合計ではなく、新しい規程どおりに1年間支給していたと仮定した額を12で割ります(支給実績が1年分に満たなくても、実績分だけを12で割るわけではありません)。

計算例

項目金額説明
毎月の給与(通常の報酬)300,000円4・5・6月の平均
四半期ごとの賞与300,000円 × 4回 = 1,200,000円7月1日前の1年間の合計
賞与に係る報酬の月額1,200,000円 ÷ 12 = 100,000円毎月の給与に上乗せする額
報酬月額400,000円この額をもとに標準報酬月額が決まり、9月から翌年8月まで適用される
1

支給した月の扱い

賞与支払届は提出しません。支給した月に賞与としての保険料を別に計算することもありません。

2

届出は年1回

算定基礎届(定時決定)に、12で割った額を加えて届け出ます。届書の備考欄に賞与に係る報酬の額などを記載します。

3

額が変わっても月変なし

賞与に係る報酬の額が変動しても、それを理由とする随時改定(月額変更届)は行いません。翌年の定時決定で反映します。昇給などで月額変更届を出すときは、算定済みの賞与に係る報酬の月額をそのまま加算します。

入社した人の扱い: 年4回以上の賞与がある会社に入社した人は、資格取得時の報酬月額に、同じ業務で同じような賞与を受ける人の「賞与に係る報酬」の平均額を加えます。

根拠条文・通達を見る(健康保険法第41条、局部長通知2)
「(1) 賞与に係る報酬額は、標準報酬月額の定時決定又は七月、八月若しくは九月の随時改定の際、次により算定すること。
ア 七月一日前の一年間に受けた賞与の額を一二で除して得た額
イ 七月一日以前一年内に諸規定により賞与の支給回数が変更され、新たに当該賞与が報酬に該当したときは、変更後の諸規定による賞与の支給回数等の支給条件であつたとすれば同日前一年間に受けたであろう賞与の額を算定し、その額を一二で除して得た額」
「(2) 1の(1)に該当する事業所に使用される者の資格取得時における賞与に係る報酬額は、当該事業所において、同様の業務に従事し、同様の賞与を受ける者の賞与に係る報酬の平均額とすること。」
「(3) 賞与に係る報酬の額に変動があつても、当該変動に基づく随時改定は行わないこと。
また、通常の報酬に著しい変動があり、随時改定(七月、八月又は九月の随時改定を除く。)を行う場合は、新たに賞与に係る報酬の額を算定することなく。(1)又は(2)に基づき算定した賞与に係る報酬の額を変更後の通常の報酬の額に加算すること。」 昭和53年6月20日 保発第47号・庁保発第21号 2 — 厚生労働省 法令等データベース
「保険者等は、被保険者が毎年七月一日現に使用される事業所において同日前三月間(…)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を決定する。」
「前項の規定によって決定された標準報酬月額は、その年の九月から翌年の八月までの各月の標準報酬月額とする。」 健康保険法 第41条 第1項・第2項(括弧書きは省略) — e-Gov 法令検索

04年3回以下の賞与 — 支給のたびに計算して届出

一般的な夏・冬の賞与や決算賞与は、こちらの扱いです。

項目内容
保険料の基準額標準賞与額(支給した賞与額の1,000円未満を切り捨てた額)
健康保険の上限年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計で573万円
厚生年金の上限1か月あたり150万円
届出賞与支払届を、賞与を支払った日から5日以内に提出
毎月の保険料への影響なし(標準報酬月額の計算には含めない)
根拠条文を見る(健康保険法第45条・第48条、同法施行規則第27条、厚生年金保険法第24条の4)
「保険者等は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。ただし、その月に当該被保険者が受けた賞与によりその年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)における標準賞与額の累計額が五百七十三万円(…)を超えることとなる場合には、当該累計額が五百七十三万円となるようその月の標準賞与額を決定し、その年度においてその月の翌月以降に受ける賞与の標準賞与額は零とする。」 健康保険法 第45条 第1項(括弧書きの一部省略) — e-Gov 法令検索
「実施機関は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときはこれを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。この場合において、当該標準賞与額が百五十万円(…)を超えるときは、これを百五十万円とする。」 厚生年金保険法 第24条の4 第1項(括弧書き省略) — e-Gov 法令検索
「被保険者の賞与額に関する法第四十八条の規定による届出は、賞与を支払った日から五日以内に、様式第六号による健康保険被保険者賞与支払届を機構又は健康保険組合に提出することによって行うものとする。」 健康保険法施行規則 第27条 第1項 — e-Gov 法令検索

05インセンティブ(歩合)は「精算期間」で扱いが変わる

1か月ごとに精算するか、2か月以上の期間で精算するか。ここが分かれ目です。

1か月ごとに精算するインセンティブと、2か月以上の期間で精算するインセンティブの取り扱いを左右に並べて比較した図
インセンティブは、名称ではなく「どの期間の成績で計算するか」で扱いが決まります。
1か月ごとに精算
毎月の給与そのもの
  • 支払い: 毎月1回以上、決まった日に支払う
  • 残業代: 割増賃金の計算基礎に含める(歩合給用の計算方法による)
  • 社会保険: 「通常の報酬」。4・5・6月の支給額が算定基礎届に入る
  • 月額変更: 金額が毎月変動するだけでは随時改定の対象にならない
2か月以上の期間で精算
労基法上は賞与に準じた扱い
  • 支払い: 毎月払いの例外にできる(精算期間ごとの支払いで足りる)
  • 残業代: 割増賃金の計算基礎に算入しない
  • 社会保険: 年間の支給回数で判定(年4回以上は報酬、年3回以下は賞与)
  • 平均賃金など: 3か月を超える期間ごとの支給なら計算から除く

労働基準法での違い

賃金は毎月1回以上、決まった日に支払うのが原則です。ただし、「1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給・能率手当」は、賞与に準ずるものとして、この原則の例外になります。2か月以上の成績で計算するインセンティブは、これに当たります。

同じく、残業代(割増賃金)の計算基礎からは「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」が除かれます。一方、1か月ごとに精算する歩合は除外の対象ではないため、残業代の計算に含めます。歩合部分は、その月の歩合給の総額をその月の総労働時間で割って1時間あたりの額を出す、という専用の計算方法になります。

社会保険での違い

毎月支給されるものは「通常の報酬」、それ以外は年間の支給回数で「賞与に係る報酬」か「賞与」かを判定します。したがって、2か月ごと(年6回)や3か月ごと(年4回)に精算して支給するインセンティブは報酬(12で割って月額に上乗せ)、4か月ごと(年3回)や半年ごと(年2回)のインセンティブは賞与(賞与支払届)になります。

歩合率・単価を変えたとき: 毎月の歩合の金額が成績で上下するだけでは随時改定(月額変更届)の対象になりませんが、歩合率や単価そのものを変更した場合は固定的賃金の変動に当たります。変更後3か月の平均で標準報酬月額に2等級以上の差が出れば、月額変更届が必要です。

⚠️ 二次情報: 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」の案内による(固定的賃金の変動の例として「請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更」を掲げる)。日本年金機構ウェブサイト(2026年9月30日確認)

根拠条文を見る(労働基準法第24条、同法施行規則第8条・第19条・第21条)
「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。」 労働基準法 第24条 第2項 — e-Gov 法令検索
「法第二十四条第二項但書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。
一 一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
三 一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当」 労働基準法施行規則 第8条 — e-Gov 法令検索
「法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当 二 子女教育手当 三 住宅手当 四 臨時に支払われた賃金 五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」 労働基準法施行規則 第21条 — 同上
「六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額」 労働基準法施行規則 第19条 第1項 第6号 — 同上

06精算期間別 早見表

インセンティブ・賞与を「何か月ごとに精算して支給するか」で、各制度の扱いを一覧にしました。

労働基準法は1か月を超えるか、平均賃金・雇用保険は3か月を超えるか、社会保険は年4回以上かが境目であることを示す3枚のカードの図
同じインセンティブでも、制度ごとに「物差し」が違います。
精算・支給の間隔年間回数社会保険健康保険・厚生年金毎月払いの原則労基法24条残業代の計算基礎労基則21条平均賃金・雇用保険の賃金日額労基法12条・雇保法17条
1か月ごと12回通常の報酬毎月の給与として算定毎月支払う含める含める
2か月ごと6回賞与に係る報酬年間合計÷12を月額に上乗せ例外にできる算入しない含める
3か月ごと(四半期)4回賞与に係る報酬年間合計÷12を月額に上乗せ例外にできる算入しない含める「3か月を超える期間ごと」に当たらない
4か月ごと3回賞与賞与支払届例外にできる算入しない除く
6か月ごと(半期)2回賞与賞与支払届例外にできる算入しない除く
1年ごと1回賞与賞与支払届例外にできる算入しない除く

※ 社会保険の判定は、新設・変更の直後は 02 のとおり次の定時決定まで切り替わりません。
※ 労災保険・雇用保険の保険料の計算では、賞与も含めて労働の対価として支払うものはすべて賃金に含まれます(労働保険徴収法第2条第2項)。精算期間による違いはありません。

制度ごとに境目が違います。 労働基準法の毎月払い・残業代は「1か月を超えるか」、平均賃金や雇用保険の賃金日額は「3か月を超えるか」、社会保険は「年4回以上か」が境目です。2か月ごと・3か月ごとの精算は、制度によって扱いが分かれる点に注意してください。

根拠条文を見る(労働基準法第12条、雇用保険法第17条、労働保険徴収法第2条)
「第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。」 労働基準法 第12条 第4項(平均賃金) — e-Gov 法令検索
「賃金日額は、算定対象期間において第十四条(第一項ただし書を除く。)の規定により被保険者期間として計算された最後の六箇月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。次項、第六節及び次章において同じ。)の総額を百八十で除して得た額とする。」 雇用保険法 第17条 第1項 — e-Gov 法令検索
「この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。」 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第2条 第2項 — e-Gov 法令検索

07制度を設計・変更するときの注意点

名称や支払い方だけを変えても、扱いは変わりません。実態で判断されます。

賃金台帳で毎月の手当と半年ごとの手当を区分していれば通常の報酬と賞与に分かれ、区分していなければ全体が賞与に係る報酬になることを示す図
規程か賃金台帳のどちらかで区分されていれば、性質ごとに判定されます。
場面取り扱い
半期のインセンティブを、毎月に分けて支払う1か月を超える期間の成績で計算したものを分割して支給しても、「通常の報酬」にはならない。社会保険では「賞与に係る報酬」(12で割って月額に上乗せ)として扱う
毎月定額の手当と、半年ごとの手当が同じ名称給与規程または賃金台帳で2つを区分していれば、毎月分は「通常の報酬」、半年ごと分は「賞与」。どちらでも区分されておらず客観的に分けられない場合は、全体が「賞与に係る報酬」になる
1か月ごとに計算できる歩合を、支払いだけ2か月分まとめる毎月払いの例外になるのは「1か月を超える期間にわたる事由によって算定される」ものに限られる。毎月の成績で計算が完結する歩合は、支払時期だけをまとめても例外には当たらず、毎月支払う必要がある
賞与を年3回から年4回に変える(またはその逆)次の定時決定による標準報酬月額が適用されるまでは、従前の扱いが続く。切り替え時期を給与担当者と共有しておく
就業規則・給与規程賞与やインセンティブなど臨時の賃金等の定めをする場合は、常時10人以上の事業場では就業規則に記載が必要。精算期間・計算方法・支給時期を規程に明記しておくと、上記の判定もしやすくなる

規程と賃金台帳を整えておくことが近道です。 社会保険の判定は「規程でどう定めているか」「賃金台帳でどう区分しているか」をもとに行われます。性質の違う手当は名称と欄を分け、精算期間と支給回数を規程に書いておくと、調査の場面でも説明がしやすくなります。

根拠通達を見る(課長通知1(1)・(2)、令和5年Q&A Q.3)
「(1) 局、部長通知1の(1)にいう「通常の報酬」には、一か月を超える期間にわたる事由によって算定される賃金等が分割して支給されることとなる場合その他これに準ずる場合は含まれないこと。
(2) 局、部長通知にいう「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」及び「賞与」は、名称の如何にかかわらず、二以上の異なる性質を有するものであることが諸規定又は賃金台帳等から明らかな場合には、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであること。」 昭和53年6月20日 保険発第72号・庁保険発第9号(平成30年7月30日改正)1 — 厚生労働省 法令等データベース
「(…)給与規程及び賃金台帳のいずれにおいても、事例1及び事例2のように手当が区分されておらず、客観的に区分できない場合には、「手当A」は一か月を超える期間にわたる事由によって算定される賃金等が分割して支給されるものとして、「賞与に係る報酬」として取り扱う。」 令和5年6月12日 事務連絡 Q&A Q.3(事例3) — 厚生労働省 法令等データベース

就業規則への記載は労働基準法第89条第4号(臨時の賃金等の定めをする場合)によります。

08よくある質問

ご相談の多い場面をまとめました。

09チェックリスト

自社の賞与・インセンティブを、次の順で確認してみてください。

10根拠条文・通達の一覧

このページの内容は、次の法令・通達の原文に基づいています(2026年9月30日時点)。

法令・通達内容
健康保険法 第3条第5項・第6項/厚生年金保険法 第3条第1項第3号・第4号「報酬」と「賞与」の定義(3か月を超える期間ごとに受けるものが賞与)
健康保険法 第41条・第43条定時決定・随時改定
健康保険法 第45条/厚生年金保険法 第24条の4標準賞与額の決定と上限
健康保険法 第48条/同法施行規則 第27条賞与支払届(支払日から5日以内)
昭和53年6月20日 保発第47号・庁保発第21号(局部長通知)年4回以上の賞与は報酬。回数の数え方、12分の1の算定方法
昭和53年6月20日 保険発第72号・庁保険発第9号(課長通知、平成30年7月30日 保保発0730第1号・年管管発0730第1号で改正)分割支給の扱い、同一性質ごとの判別、新設時の扱い
令和5年6月12日 事務連絡(Q&A)手当の区分の事例、新設時の賞与支払届、「支給することができる」規定の扱い
労働基準法 第24条第2項/同法施行規則 第8条毎月払いの原則と、1か月を超える期間で算定する手当の例外
労働基準法施行規則 第19条第1項第6号・第21条歩合給の割増賃金の計算、割増賃金の基礎から除外する賃金
労働基準法 第12条第4項/雇用保険法 第17条第1項平均賃金・賃金日額から除く「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」
労働基準法 第89条第4号臨時の賃金等の就業規則への記載
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第2条第2項労働保険料の計算における賃金の定義(賞与を含む)

法令は e-Gov 法令検索、通達は 厚生労働省 法令等データベース で原文を確認しています。随時改定における歩合率変更の扱いのみ、日本年金機構ウェブサイトの案内(二次情報)によります。

まとめ

  1. 社会保険では、年3回以下は「賞与」、年4回以上は「報酬」。判定は毎年7月1日、規程の定めか直前1年間の実績で行います。
  2. 年4回以上の賞与は、1年分を12で割って毎月の給与に上乗せ。新設・変更の直後は、次の定時決定まで扱いが切り替わりません。
  3. インセンティブは精算期間で決まります。1か月ごとなら毎月の給与、2か月以上なら労働基準法上は賞与に準じた扱いになり、社会保険では年間の支給回数で判定します(年4回以上なら報酬)。
  4. 制度ごとに境目(1か月・3か月・年4回)が違います。設計や変更の前に、規程と賃金台帳の書き方を含めてご相談ください。